アメリカでは妊娠初期は0~13週で1st Trimesterと言います。
この期間に病院に行くのは基本3回です。初期の健診スケジュール、やるべきこと、困った出来事などを紹介していきます。
初期の健診・検査
1、初診…8~10週
2、健診…10~13週
3、出生前診断(First trimester screen with Genetic Counselor)…10~13週
日本と同じで初診から妊娠中期までは4週間おきに健診があります。
尿検査、胎児の心拍音検査(お腹に器材を当てて確認する)などで母子の健康状態を確認します。
超音波検査は専門の検査技師が行うので毎回の健診では行われません(※)。
基本的に健診はドクターが診察しますが、時々ナース・プラクティショナーだけの診察になることもあります。
このナースはドクターに準ずる高い技術を持つナースという位置づけで、多忙なドクターが不在の際に対応します。
日本と大きく異なる点は出生前診断が一般的に受ける検査として組み込まれていることです。
(※)日本語を話せる産婦人科医に通っていた知人は健診で毎回超音波検査を受けていました。
日本のシステムを導入して診察時にドクターが行っていたそうです。
ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner / NP)
アメリカにおけるナース・プラクティショナーとは上級看護師のことで、一般のナースにはできない仕事が可能です。
検査の指示・判断・結果の説明、初期症状の診断、処方、投薬、診療所の開設というように様々な仕事の権限が与えられています。ただし、外科的処置は行えません。
元々は過疎地で医師不足を解消するためにできたポジションでアメリカでは普及しています。
アメリカの医療制度をよく理解していなかった当時は、この診察システムに不満がありました。いくらドクター並の知識と技術があっても、ナースであることには変わりないと思っていたからです。
後に通訳から教えてもらい、ナース・プラクティショナーにも専門分野があり、さらには資格を維持するために数年おきに研修をしているとわかりました。納得いかない部分は残るものの、アメリカで生活するからには日本と比較しても仕方がない、と捉えることにしました。
結果として私は妊娠期間中に深刻なトラブルは起きなかったので、その後、その制度について深く考えることはありませんでした。
しかし、元々持病を抱えての妊娠や、予約スケジュールがナース・プラクティショナーばかりになってしまった友人は不安に思って受付でドクターに変更してもらえるように依頼していました。受付スタッフは単純にドクターのスケジュールだけをチェックして予約を入れていくので、予約時に診察担当が誰になっているか確認しておくのがいいと思います。
初期や中期に2回以上ドクターの診察がない予定が組まれていれば3ヶ月ほど空いてしまうので注意しておきましょう。
出生前診断(First trimester screen)
一方で出生前診断が妊娠中に行われる検査として普及しているのは良い点だと思いました。
遺伝子検査とも言われるこの診断は日本では賛否両論あり、日本で出産経験がある人に私がこの検査を受ける話をしたら驚かれました。
よくよく聞くと、日本では35歳以上の妊婦やハイリスクの持病を持った人が受けるもの、というイメージだそうです。
出生前診断とは
この検査では胎児がダウン症候群(21トリソミー)、エドワーズ症候群(18トリソミー)、パトー症候群(13トリソミー)という先天性の病気を持っているか調べることができます。
検査方法は血液検査で染色体異常があるか確認し、超音波検査で胎児の首の後ろのむくみから判断します。
この2つの検査結果から陽性だと判断されたら、さらに詳しく調べるためにお腹に針を刺して羊水や絨毛を採取します。
これらには流死産のリスクがあるので、主治医の許可のもと、検査をするための最終的判断は妊婦本人が同意した上で行います。
また、より精度の高い新型出生前診断(NIPT)は母体の血液中にある胎児細胞を取り出して疾患の有無がわかります。
『事前にリスクがわかるし、赤ちゃんの性別もわかっていいよ!』と友達に言われて軽い気持ちで検査に行きました。
めったにない超音波検査で胎内の様子を見れるので夫もうきうきでした。
検査前のカウンセリング
最初に30分~1時間ほど、前回主治医から受けた説明よりさらに詳しく、専門カウンセラーから検査内容とリスク、かかる費用について説明を受けます。
私たちは通訳に翻訳してもらいながら会話するのでアメリカ人の2倍くらいの時間がかかったと思います。
説明内容を理解したこと、そして説明を受けた上で、当日の超音波検査と血液検査をするためにサインをしました。
もしも、さらに詳しい検査が必要ば場合の判断はそのときに選択できます。
そしてオプションとして選べる新型出生前診断(NIPT)については保険会社の適用金額を確認してから連絡することにしました。
血液を採取しておけば、プランの選択は後でも間に合うということでした。
超音波検査
カウンセリング後、検査部門で超音波検査を受けます。ここでは専門の検査技師が胎内の様子を確認します。
仰向けになったお腹にジェルを塗り、検査技師が検査を開始。
まず最初に喉の奥から変な声が出てしまいました。
なぜかというと強い力でぐりぐりと腹部を抑えて検査器具を動かしているのです。
痛いということは伝えたものの、こんなものだと一蹴されてそのまま続行です。
前回よりも精度がいいのか、大きなモニター画面ではっきりと胎児の姿が見れて感動です!
小さくてもちゃんと人間の形をしている!
よく見ていると胎児の体だけでなく子宮や卵巣の様子まで細かくチェックしていました。
順番に胎児の体の部分を計測している最中、突然検査技師がお腹をとんとんと刺激し始めました。
どうやら胎児が眠っているらしく、この角度では必要な部分が計測できないのだそう。
まさに叩き起こそうとしていたのですが、我関せず、という風に起きる気配がありません。
冷たい水を飲んでひんやりした刺激を与えたり、咳で震動を与えたり…あれこれ試してようやく動いてくれました。
起きてからの赤ちゃんはとても活発で羊水の中で泳いでいるように見えました。
極めつけはエビみたいに大きく後ろにぴょーん!と跳んだ瞬間、みんなで爆笑。
なかなか動かなかったせいか随分長い時間(1時間弱)検査をしていました。
私たちにとっては赤ちゃんの様子がたくさん見れて幸せな時間でした。
一通りの検査が終わったら技師が気になる点をドクターに報告します。
このドクターは主治医ではなく、当日勤務している産婦人科医になります。
ドクターの所見をもらって異常なしだったら終了です。もしも再検査の場合は受付で予約を取ります。
いずれにせよ、検査で撮影した画像は主治医にも報告されるので、最終的な判断は主治医を通して下されます。
検査が終わって『多分大丈夫だろう』と、思いつつ、『血液検査で何か異常が見つかったらどうしよう?』と、この時になって初めて検査の重大性を意識しました。
実は検査の前はもしもリスクがあるなら残念な結果になる可能性もある、と考えていました。
でもあんなに元気に動いている赤ちゃんがとても愛しくてそんなことできそうにない…。
帰宅後、改めて先天的疾患や障害について調べました。
結果が出るまでの約1週間、我が子が病気や障害を持って生まれてくる可能性について考えて悶々とした日々を過ごしました。
結果は陰性で事なきを得ましたが、予想外の出来事に対して自分がどう行動するのか、どう感じるのか、考える機会が持てたことはありがたいです。
検査費用
そして何かと医療費が高いアメリカ。気になる検査費用の自己負担は$100程度。
アメリカでは加入している保険プランによっては検査費用が保険適用され、自己負担なしの場合もあります。
さらに35歳以上の妊婦であれば多くが保険適用されます。
新型出生前診断(NIPT)も保険適用するかはプランによって違うので要確認です。
ジカウイルス感染症(ジカ熱)検査
第二子を妊娠中の時期はジカ熱が中南米で流行っていました。
妊婦が感染すると胎児にも影響を及ぼす危険性があります。
それゆえ初診時に、過去数カ月以内に州外に出たことがあるか質問されました。
ちょうど妊娠が判明する直前にメキシコに旅行していたので、ジカ熱の可能性があるとして検査することになりました。
この検査はジカ熱が流行している危険地域付近に住んでいる、または行ったことがある人のみに適用されます。
後日、同じ病院内の専門医のもとでカウンセリングを受けて、血液検査をしました。
まずジカ熱のリスクや感染していた場合の母子への影響について説明を受けます。
そして内容を理解した旨の同意書にサインした上で血液検査を行います。
検査結果が陽性だった場合、さらに詳しい検査を受けます。
この時は陰性だったので、病院の個人アカウントと通して検査結果の通知が来ました。
健診・出産費用について
2回目の健診時に病院の経理担当から保険会社のプランの確認、支払い方法、年間自己負担の限度額の説明を受けました。
アメリカでは妊娠・出産に関しても保険が適用されていいな、くらいにしか考えていなかったのですが、医療保険の仕組みが複雑すぎること!
大幅に簡略すると、ネットワーク内の医療機関で医療行為を受ける場合、1年間に自己負担する費用の上限が各保険プランで定められています。
その上限金額に達すると、その後にかかる費用は保険会社がすべて負担してくれます。
例えば、1月に初診を受けて9月に出産予定だとすれば、自己負担額は最低限に抑えられます。
しかし、7月に初診を受けて翌年2月に出産予定だとすれば、翌年1月には保険が更新されて自己負担額の累積していた金額がリセットされてしまいます。
つまり妊娠中に年をまたぐと自己負担額の上限に2回達する計算になるので自己負担費用が増えてしまいます。
また、同じ病院といえども産婦人科医、検査部門、入院部門(病院)、麻酔科医は支払先が異なると聞き、頭が痛くなってきました。
しかも今までの説明はすべて妊娠中のもので、出産に関してはまた別の手続きが必要でした。
同じ病院で出産を希望していたので、担当部署に移動して登録手続きを行いました。(別の病院で出産するなら直接その病院へ行って手続きが必要です。)
保険会社と連絡を取った後に出産費用を見積もりして連絡してもらえるとのこと。
ここでも驚きの一言が。
出産前に費用を支払っていないと入院させてもらえないそうです。
通訳の話では、予定日よりも随分前に緊急で分娩することになったら、まずはクレジットカードがあるか聞かれるのだとか…。
冗談とは思えなかったので、病院から指示されている28週頃までに支払うのを忘れないようにしなければいけません。
健診・検査・出産費用は高額なので医療と保険制度をよく理解しておくべきだと改めて実感しました。
初期にやるべきこと、個人的にやってよかったこと
・出生届、パスポートの申請書類
日本の手続きに必要な書類を領事館でもらいます。これは産後に受け取ることも可能ですが、母子手帳と一緒にあらかじめもらっておくと何度も訪問せずに済みます。
・領事館で母子手帳を受け取り
アメリカでは母子手帳は使いませんが、いずれ日本に帰国する予定があるなら医療機関や定期健診のときに確認されます。当時は領事館でパスポートとビザを持参して申請すれば無料で発行してもらえました。
在米中の書き込みは自分で行うのですが、有料の英語版も購入してアメリカのドクターに記入してもらっている人もいます。
・加入している医療保険会社のマタニティプログラムに登録する
アメリカの保険会社と提携している日本の保険会社だったので妊娠中のサポートシステムがありました。日本語で妊娠中の健康状態や疑問について相談できます。
・日本から妊娠・出産についての本や雑誌を取り寄せる
・病院で渡された英語の本を読む
・大学のESLクラスで語学力アップ
子供を守るためには自分が英語を身に着けないといざという時に困ると思って会話力の向上に努めました。産後はじっくり勉強できる時間はなかったし、入院時や小児科医との英語でのコミュニケーションにも自信が持てたので大いに役立ちました。
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